2026年、バラモンキング。
僕は、初めて完走することができなかった。
2014年からトライアスロンの大会に出場してきて、初めてのリタイアだった。
最終関門を通過できず、係の人にゼッケンを回収された。
初めての経験だった。
悔しさがこみ上げてくるのかと思っていたけれど、意外にも、そのような感情はなかった。
アキレス腱の故障で3か月間、練習ができなかった。
そこから大会に向けて、自分にできることを積み重ねてきた。
それでも、当日の僕はゴールすることができなかった。
その日の自分が精一杯取り組んだ結果なのだと、素直に認める自分がいた。
今回は、トライアスロンの技術や作戦的なことはいったん脇に置いて、完走できなかった経験を振り返り、これからのトライアスロンとの向き合い方を考えてみたい。
1.初めてのリタイア

これまで、トライアスロンに挑戦してきた。
初めて参加した2014年の大会を除けば、出場してきたのはミドルやロングの大会ばかりだ。
僕にとってトライアスロンは、スピードを競うというよりも、自分自身に挑戦するという意味合いが強い。
だからこそ、完走できなかったことに対して、悔しさや敗北感がこみ上げてくるのかもしれないと思っていた。
でも、実際は違った。
アキレス腱の故障で練習できない期間があり、その状況から大会に向けてできることをやってきた。
結果としてゴールには届かなかったけれど、そこまでの取り組みがなくなるわけではない。
完走できなかったという結果と、自分ができることをやってきたという事実。
その二つを分けて受け止めることができたのだと思う。
そして、今回の経験は、自分の体との付き合い方を考え直す機会にもなった。
以前のブログにも書いたけれど、怪我をしたことで、日々のメンテナンスや体づくりの大切さに気づくことができた。
今回のリタイアも、これからの自分に必要なことを考える機会になった。
2.ゴールを目指す気持ちが薄れていった

ランニングの25km地点。
僕は「もう、走れない」と思った。
その後、残り11kmの関門を通過した。
ゴールまで残り11km。制限時間までは1時間40分あった。
数字だけを見れば、十分にゴールを目指せる時間だと思う。
しかし、実際の僕は違った。
走るたびに、みぞおち付近に筋肉痛のような痛みを繰り返し感じていた。
体力的にも限界を感じていた。
「頑張ろう!」
そう思う気持ちが、少しずつ薄らいでいった。
そして、いつの間にか、
「こんなコンディションでは無理だ」
という弱音に変わっていた。
ゴールまでの距離も、残された時間も分かっていた。
それでも、ゴールする自分をイメージすることができなかった。
今、振り返ってみると、あのときの僕は、残された時間や距離だけではなく、自分の体の状態とも向き合っていたのだと思う。
もちろん、もっと違う選択があったのかもしれない。
でも、あのときの自分が何を感じ、どんな状態だったのか。
それを振り返ることも、今回の経験から学ぶために必要なことだと思う。
完走できなかった自分を責めるのではなく、あのときの自分を理解する。
それも、今回の振り返りで大切にしたいことの一つだ。
3.命と挑戦を天秤にかける

今回の大会に参加する前、僕は久しぶりに遺書を書いた。
そして、自宅の引き出しに入れてから、五島列島へ向かった。
アキレス腱の故障で3か月間練習できず、体力が大幅に低下していることは、自分でも分かっていた。
大会に向けて、できることはやってきた。
それでも、競技中に何かが起こる可能性はある。
特に、水泳の後に走る自転車は、距離が150kmを超える。バラモンキングはアップダウンの多いコースで、坂道を下るときには、スピードが時速50kmを超えることもある。
そんな状況で落車すれば、けがだけでは済まない可能性もある。
だから、自分の体に不安を感じたら、大人の選択をしようと思っていた。
それでも、遺書を書いてから大会に参加したという事実は、今回の経験を振り返るうえで、僕にとって大きな意味を持っている。
そもそも、趣味でトライアスロンをやっているのに、遺書まで書いて出場する大会に参加していいのだろうか。
僕は、そう考えるようになった。
「無事帰るまでがトライアスロン」
競技中に全力を出し切ることはある。
自分の限界に挑戦することもある。
でも、全力を出すことと、命や健康を危険にさらすことは、同じではない。
トライアスロンは、僕にとって大切な趣味だ。
自分自身に挑戦できることが楽しい。
だからこそ、これからも続けていきたい。
でも、人生と天秤にかけたとき、どちらが大切なのかは明らかだ。
大会を完走することが、人生の目的ではない。
大会を楽しみ、挑戦し、無事に家に帰る。
そして、また次の大会に向けて準備をする。
そんな時間を、これからも積み重ねていきたい。
4.長く挑戦し続けるために

バラモンキングは、僕にとって、自分の体力を使い切ってようやく完走できるような大会だ。
でも、毎回、体力を使い切るような状態で挑戦していたら、体を壊してもおかしくない。
今回、完走できなかった経験を通して、そのことを改めて考えるようになった。
大切なのは、大会を完走するための体力だけではない。
長くトライアスロンを楽しみ、挑戦し続けられる体をつくることだ。
筋力をつける。
体のしなやかさを保つ。
ストレッチや筋力トレーニングを日常に取り入れる。
自分の体の状態を確認しながら、無理なくトレーニングを積み重ねていく。
一生使う自分の体だからこそ、大切にしていきたい。
アキレス腱の故障をきっかけに、日々のメンテナンスを意識するようになった。
そして、今回のバラモンキングで完走できなかったことは、これからの自分に必要な体づくりを、もう一度考える機会になった。
完走できなかったことを、ただの失敗で終わらせるのではなく、これからに生かしていく。
それが、今回の経験から僕が得たものだと思う。
トライアスロンを始めてから、12年。
これからも、自分自身への挑戦を続けていきたい。
ただし、完走することだけにこだわるのではなく、自分の体を大切にしながら。
無事帰るまでがトライアスロン。
これからも長く挑戦し続けるために、自分の体と向き合いながら、トライアスロンを楽しんでいこうと思う。
最後に、感謝を。
バラモンキングは、僕一人の力では参加できない大会です。
福江島の島民の皆さん、ボランティアの皆さん、マーシャルの皆さん、そして大会運営に携わってくださった皆さん。
大会を支えてくださり、本当にありがとうございました。
皆さんの支えがあったからこそ、僕は今年もバラモンキングに挑戦することができました。
心から感謝しています。

イラスト:ネム蔵 × 杉野画伯×ChatGPT(AI生成)

